妊娠中の風邪、肩こりに葛根湯を勝手に飲んでもいい?
妊娠中はなんでも薬が飲めるわけではないので、うがい、手洗い、マスクを着用するなどして、風邪をひかないように注意をしていることと思いますが、それでも風邪をひいてしまう事ってありますよね。
妊婦は薬を飲んではいけないと言われているのは、化学物質が胎児に危険な影響を与えるというだけで、植物から出来ている漢方薬なら大丈夫だという説を唱える人もいます。
よく妊婦の風邪や肩こり、頭痛には葛根湯が良いと言われていますが、妊婦が葛根湯を飲んでも本当に大丈夫なのでしょうか。
そもそも葛根湯ってどんなもの?
葛根湯とは、葛根(かっこん)、麻黄(まおう)、生姜(しょうきょう)、大棗(たいそう)、桂皮(けいひ)、芍薬(しゃくやく)、甘草(かんぞう)の7つの薬効を持つ植物を配合したお薬です。
葛根と桂皮が発汗を促し解熱、麻黄が発汗と気管支拡張、生姜が体を温め、芍薬が痛みを和らげ、甘草がアレルギー症状や炎症を抑え、大棗が薬効の調和するため、風邪の諸症状を和らげるのに役立ちます。
配合されている比率は、各メーカーによって若干の違いはあるものの、使われている原材料そのものに違いはありません。市販のものもドラッグストアで販売されていますが、病院で処方されるものはツムラ、コタローなどのメーカーがあります。
胃の中にものが入っていると吸収が弱まりますので、空腹時か食間の服用が効果的です。ドリンクタイプの物は常温でそのまま、粉末タイプの物は常温の水かぬるま湯で服用します。
粉末タイプはお湯に溶いて飲んでも、粉を口に含んで流し込んでもどちらでも問題はありません。
葛根湯に使われている生薬とは
日ごろから漢方薬を愛用してなければ、生薬の名前だけ見ても、どんな効果があるのかなんて分かりませんよね。
葛根
発汗作用があります。ちなみにクズ餅やクズ湯は葛の根から採ったデンプンで出来ています。
麻黄
乾燥地帯に分布する低木の常緑樹で、発汗促進、利尿作用があります。
生姜
発汗作用、消化機能の強化、吐き気止め、食欲増進、鎮咳(せき止め)作用があります。
大棗
胃腸機能の調節、鎮痙(主に内臓の痙攣を抑える)作用、利尿作用、併用する薬の薬効を調整する作用があります。
桂皮
発汗作用、胃腸機能の強化、のぼせ、鎮痛、解熱作用、腸の蠕動運動(便を送りだすこと)の促進、快眠効果があります。
芍薬
鎮痛作用、鎮痙作用、体の温め効果、気管支拡張、抗炎症、利尿作用、免疫力の増強効果があります。
甘草
痙攣(けいれん)止め、止渇作用(のどの渇きを止めること)、鎮咳作用、解熱作用、アレルギー症状の緩和、強壮作用があります。
葛根湯は妊婦でも飲めるって本当?
化学製剤ではないため、胎児の発育に直接影響するような事はありません。妊娠中は薬の服用は避けるべきでも、母体の健康に配慮し、風邪薬の処方の必要を医師が認めた場合は葛根湯を処方することがあります。
医師が処方するくらいだから、妊婦でも葛根湯なら飲んでも大丈夫だと言われているんですね。でも、医師が処方するから、絶対に安全だというものではないんですよ。
母体が消耗・衰弱していると、胎児の発育にも影響が出ますよね。薬の影響を考慮しても、投薬した方が良いと判断されたというだけで、葛根湯なら妊婦が安心して飲める薬だという訳ではありません。
葛根湯の何が妊婦に良くないの?
漢方薬には禁忌(してはいけないこと、避けること)があります。発汗作用の高い麻黄は、妊婦への投与を禁忌としています。
葛根湯に配合されている生薬で、妊婦への投与を禁忌としているのは麻黄だけですが、葛根・桂皮・生姜にも発汗作用がありますし、麻黄・大棗・芍薬には利尿作用があります。
そもそも妊娠中は寝汗をかきやすく、汗が乾く時に体を冷やしてしまいますよね。冷えは母体にも胎児にも良い影響は与えません。また、胎児へも血液の供給を行っている、ママの体は水分量が不足してしまいがちです。
水分不足が慢性化すると、血栓や血行障害の発症リスクも高まりますし、胎児への血液供給も悪くなってしまいます。
葛根湯=漢方=妊婦でも安全という考えは捨てましょう。葛根湯を飲むのは、自然治癒を待っていたのでは、母子ともに良くないと医師が判断したときだけにした方が良さそうですね。